※本記事は、『ブレインメンタル強化大全』読書感想文キャンペーン(2020年10月)にて、最優秀賞を受賞したものです。
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ミドルエイジのぼんやりした脳と心に効く本が出た!
樺沢先生が“脳と心”に効く健康大全を出版されたって…!?
前著『ストレスフリー大全』で、不安やストレスでぐったりしている我々現代日本人に向けて、「ラクに生きる方法」を惜しげなく披露した著者が、今度は「脳と心」が冴えわたるメソッドをご教示くださるというのだ。
正直、「これ以上他にも自己研鑽方法があるの!?(本音=まだ己を高めるためにやらなきゃいけないことがありますか!?朝散歩一つ継続することですら難しいのに…半泣き)」という思いがあり、読む前から軽いプレッシャーを感じる。しかも今回は、100個もの習慣があるというのだ。
…どんな習慣だろう。
100項目もあれば、2~3項目くらいは、自分にもできる習慣があるかもしれない。100個やらなきゃ健康になれないというわけではなく、先生のことだから「全部教えるけどさ、とりあえずどれか一つでもやってみなよ。」ときっと背中押ししてくれる内容に違いない。本を手に取るプレッシャーがワクワクに変わっていく。
近頃の私は、どうも冴えない。もやもやと心が落ちてしまうことが多いし、身体もスッキリしない。ロクに運動していないのに疲れているという、なんとも悲しい状態だ。夫に相談すると「それが老化というものです。」と人生の先輩としての返答が来るが、そうなのか…?この不調、すべて老化が原因…?
年齢ばかりが原因ではない
間違いなく以前に比べて活動量が減り、身体が年齢とともに衰えてきているのは感じるが、年齢だけが原因だろうか。
自分の両親を思い浮かべると…かなり元気!スポーツをし、趣味の園芸や家庭菜園を楽しみ、家事や介護に勤しみ、友人たちと会合を楽しんでいる。一日における活動量は両親のほうが明らかに多い。倍どころではなく、3~4倍の差がつくのではないだろうか。ちなみに自分は39歳、母65歳、父69歳。一番身近な9歳年上の夫を例に挙げても、仕事に通勤に(これが運動となっている)遊びに家事に妻と娘の対応に…フットワークも軽く活動量が多い!「体力あるな~。」といつも羨ましく思う。
年齢…ほぼ関係ないのでは?
このエネルギー量の違い、元気いっぱい生活を送れるヒントは『ブレインメンタル強化大全』に書いてあるに違いないと思い読み始める。
ビンゴ。
本書には、年齢に関係なく脳と心、ひいては肉体が元気で活力にあふれた人生を送ることができるメソッドがぎっちりと詰まっている。
100項目の勘違い
100個の習慣について、本を開く前に勝手な想像が広がる。「そんなにたくさんあるのかあ。細かく生活習慣について指導が書いてあるに違いない。アボカドを種ごと食べましょう、とか、寝る前に好きな香りを嗅ぎましょう、とか、脳の活性化のために本の音読を一日一節しましょう、とか、朝散歩のときは一緒に腕振りしましょう、とか、そんな感じかな~。」と、至ってポップな内容を想像していた。
全然違った。
精神科医・樺沢紫苑先生が、「WITHコロナ時代」の日本人を健康に!!!とかなり本気で挑戦したシリアスな内容だった。最新の科学データとご自身の実証実験をひっさげて「これでもか」というくらい健康メソッドをぶつけてきた本だ。
著者のYouTubeや書籍に親しみのある人間ならば、睡眠、運動、朝散歩といった生活習慣について、ある程度「これをすれば、こんな問題が解決するよ。」を知っていることだろう。
今までと同じことが書かれていると思う?
そうであり、そうではない。
本書は序章と5つのチャプターで構成されている。柱になるのは『睡眠』『運動』『朝散歩』『生活習慣』『休息』の5つ。馴染みのあるワードもあるだろう。
しかし、動画や今までの本とは全然違う。とにかく1つ1つの項目が膨大なエビデンスに基づいた、ものすごく説得力のあるメソッドばかりなのだ。今までなんとなく「とにかく7時間は寝たほうがいいんだよね、とりあえず朝散歩すれば色々いいんだよね。」とぼんやりと認識していたことに、「なぜ、それが効くのか!?やらないとどうなるのか!?」を大ボリュームで迫ってくる。読みながら「これをやらなきゃ自分の未来がやばい…。」とドキドキするくらいの説得力だ。グラフや図式を多用している点も大変分かりやすい。
そして各チャプターにおいて、「ここまで刻んでくる…?」というくらい細かい情報が公開されている。例えば、“運動で得られるメリット”について大まかに、1.ダイエット効果 2.身体の健康効果 3.脳の活性化 4.疲労回復効果 5.メンタル改善効果 6.魅力が高まる の6つに分けられており、さらにそこから15の項目に細分され、そしてまたここからなんと51項目に展開されていた。ちなみにこれほどのボリュームが掲載されていて1ページ分。(p.87参照)表になっていて、小さな文字でぎっしり教えてくれているのだ。かなりかみ砕いた濃厚な情報が提供されているか、お分かりかと思う。
体験談①お酒について
さて、ここからは本書で取り上げられている項目について、自分の体験談を紹介したい。まずはお酒について。
飲酒については、チャプター4「生活習慣」内でp.194~p.197,p200に記載がある。冒頭でお酒好きの人間にとって厳しいデータが突き付けられる。
お酒は、飲めば飲むほど健康に悪い。「少量の飲酒は健康に良い」という概念は現在ではほぼ否定されており、お酒を飲まないのが最も健康であると言えるということだ。
ショックを受けると同時に私はホッとした。なぜなら、私はここ1年間、飲酒量が激減していたからだ。
それまでは、ほぼ毎日アルコールを飲んでいた。特にフルタイムで仕事をしていた頃はひどく、外食先でも飲み、家でも飲み、量も多かった。お店で飲む場合は3杯程度、調子に乗ると4杯、家ではもちろん1缶では済まない。休肝日が週に1日あるかないかくらいの生活を数年間していた。
ある時ふと「自分はアル中ではないだろうか?」と心配になり、職場の酒好きの医師に軽く相談してみたところ、彼はいくつかのチェック項目を教えてくれた。全て当てはまらなかったため「なんだ、大丈夫だ~。」と安心して飲み続けた。今思えば、あれは大丈夫ではなかったのだ…冷や汗。
退職してから量は減ったものの、夕飯時にビール1缶は飲むような生活を送っていた。
そんな飲酒生活を変えるキッカケがやってくる。ダイエットだ。生活環境が変わり、運動不足とカロリー過多が原因ですっかり太ってしまった自分にほとほと嫌気がさし、「こんな食生活じゃ痩せるはずがない!」と一念発起。1ヵ月間、1滴も酒を口にしなかった。あんなに飲んでいたのに、これほど飲まなくても平気なのだと自分でも驚いた。飲みたい気持ちも起きなかった。お酒はやめられるのだ。
1か月半~2か月程、断酒していた。その後は、会食時には飲んでいたが「飲まなくても平気」と分かったので、自宅でお酒に手が伸びる回数が激減した。追い打ちでコロナ。緊急事態宣言の頃、自宅での飲酒量が増えている、スーパーでアルコールが飛ぶように売れているというニュースを耳にしたが、私は逆だった。お酒を飲むことがたまの「楽しいイベント」になっていたので、外食をしなくなって、ますます飲酒量が減った。
結果、得られたメリットを挙げよう。
長期的最大のメリットは、病気のリスクが下がったこと。本書を参考にすると、脳卒中・心不全・高血圧・肝硬変になるリスクを下げることに成功したと言える。祖母と父が高血圧なので、もしかしたら遺伝的に自分も将来的にそうなってしまうのでは…?という懸念を軽減できた。
肝硬変について、これは実は危機一髪だったのかもしれない。つい最近、血液検査を行ったところ「脂肪肝になるかもしれない」結果が出て、大きなショックを受けたところだった。再検査しても同様の結果だった。現在飲酒していなくても、過去に積み上げた習慣は身体へと如実に反映されていた。脂肪肝は多量の飲酒が一因であり、それが進むと肝硬変になる。肝硬変になると、食道静脈瘤など命にかかわる状態となる。それを防いだのだから、お酒を減らして本当に良かった。
また、短期的に分かりやすいメリットとしては、
- 二日酔いで苦しまない
- 二日酔いで家族に迷惑をかけない
- 飲酒後のダルさ、眠気からの解放
- たまに飲む機会が楽しみになる
- 経済的である
等が挙げられる。①については、経験者なら分かる、あのグルグルぐらぐらした感じ、頭痛、吐き気、等だ。時間がかからないと治らない辛い症状である。
③について、飲酒後すぐ寝てしまうと、夜家事及び、やろうと思っていたことができない。その上、この類の睡眠は長く続かないため、変な時間(夜中の2時や3時)に目覚め、しょうがないから無理やり活動して、早朝また少しだけ寝るという悪しきパターンに陥る。
②とも被るエピソードになるが、「今夜観ようね!」と娘と約束していたアニメを飲酒のために寝てしまい観られなかった後悔を引きずっている。娘は何度も寝ている私の傍にきて「起きないかな…」と見つめていたらしい。本当にごめんなさい。そして、酔っぱらって寝てしまい、夜中目覚めて唸っている私に、毎回白湯を作って運んできてくれる夫にも、謝罪と感謝の念を。いつもありがとうございます…。
それでも、今までの人生を振り返るとお酒で楽しかった思い出は数えきれない。好きな人たちと楽しく飲むお酒は本当に美味しい。飲みの席があったからこそ、人生が前に進んだ…なんていう快進撃も、私だけではないはずだ。
お酒は美味しい、楽しい、ゼロにするのは寂しい…そんな同志は、本書に「健康を害さない飲酒量の目安」「正しいお酒の飲み方」が細かく指南されているので、ぜひ参考にして健康的で楽しいアルコールライフを送ろうではないか!
体験談②朝散歩について
「樺沢先生と言ったら朝散歩」というくらい、著者は「朝散歩」を推している。朝散歩の多岐にわたる健康効果とその根拠、実践方法については本書で詳しく解説されている。
私は今までに何度も朝散歩に挑戦している。数週間、比較的長く続くこともあれば、恥ずかしながら数日で終わってしまうこともあり、その繰り返しだ。その経験を踏まえて、どんな効果を得られたのか、どうすれば継続できるのか、反省点や改善点は何かを考察してみよう。
得られるメリットは人それぞれだが、私の場合第一に、「朝散歩してる自分、いいじゃん!」という自己肯定感を得られたことだった。(※現状の自己肯定感が低い場合に発動される効果である。涙。)この「自分いいじゃん。」と思える小さな満足感が一つでも生活に有るか無いか、それが継続されるどうかによって、「生きる楽しさ」が大きく変わるのだ。この気持ちが生まれた背景には間違いなくセロトニン不足の解消があるだろう。
また、朝散歩を生活ルーティンに組み込むことで、一日のリズムが整い「ぐだぐだしていない自分」に安心ができる。散歩自体も清々しく気持ちがいいうえに、気分も良くなる…というわけで、メンタルにかなり効くと感じる。
このような効果を実感しても長期継続ができなかった理由として、環境を整えていないこと、ハードルを高くしていたことが原因に考えられる。
私の朝のスケジュールに散歩を組み込むためには、何時に起きなければならないか計算してみよう。
平日は7時に娘の朝食を出す、7時半までにお弁当を仕上げる、娘を見送る、そこから夫の朝食からの夫婦団欒タイムで8時~8時半。夫の見送り後、朝家事が始まる。これがルーティン。現在は、7時の朝食に間に合わせるために6時半起床。このうち、週に二日間は部活の朝練があるために1時間繰り上げられ、5時半起きをしている。
朝散歩は起きてから1時間以内に15分~30分行うのが基本なので、それに沿おうとすれば、出かける準備を含めると4:45もしくは5:45起床が必要となる。睡眠時間を7時間確保したいと考えると、逆算して朝練前日は21:45、普段は22:45に就寝しなければならない。しかもすぐ寝つけるわけではないので、もっと早くにベッドに入る必要がある…。お風呂は20時には入るのがいいだろう。うーん…かなり早い…!
現在の就寝時刻は0時を回っていることがほとんどだ。朝散歩を実践するためには、今の生活、特に夜の過ごし方の抜本的改革が必須となる。
ここで、気づくのが「ストイックに構えすぎてない?」ということ。“毎日やらなきゃいけない、規定通りにやらなきゃいけない”と最初からハードルを高くするから、それがクリアできない自分が嫌になって結局辞めてしまう闇に落ちていないか、ということ。
朝散歩は毎日やらなくても良い、と先生は仰っているではないか。そもそも朝の4時台なんて、冬場はまだ日が出ていない。朝散歩の意味がない。だったら、朝練の日はやらないと最初から決めておけば、「決めたことが実行できない罪悪感」が減る。
そして、いつも家族のスケジュールに合わせることばかりせず、土日の活用をしたら良い。夫、娘と別活動をしても良いではないか。よし、2日間の散歩日確保。週末と朝練を抜いた残りの平日は3日間。このうち2日間行ければ良しとしよう。ハードルが下がってきた。これで合計週に4日散歩する計算だ。これだけできればすごい!むしろ出来過ぎ?
土日だって、どちらか一日でも良いではないか、週に3日継続できるようになったら、大きな進歩。残りは日向ぼっこで代用。まずはここを目指していくこととする!
最後に、夏の朝散歩で私が犯したミスを共有して体験談の締めくくりとしたい。女性なら共感していただけるだろうか、紫外線対策の件だ。
夏休みに海でうっかり火傷レベルの日焼けを負い、顔にもシミを作ってしまった私は、日光を今まで以上に恐れるようになった。ゆえに、朝散歩の際には日焼け止めクリームを顔にも身体にもしっかり塗り、もちろんマスク着用、さらに長袖のラッシューガードを羽織り、キャップを深く被り頭皮と髪を守り、UVカットのコンタクトレンズを着用し、時にはサングラスをして、なるべく目に光が入らないように気を付けていた。
…朝散歩的には間違いだらけだった…!!!
目から光が入ることに意味があるので、サングラスやブルーライトカットの眼鏡はNGと本書に記載がある。また肌をある程度露出しないとビタミンDが活性化しないという。
私はせっせと朝散歩の効果を減少させる工夫をしていていたのだ。残念。この度、本書で学んだので、今後の朝散歩では、日焼け止めは顔だけに留めておくことを決めた。
『休息』のチャプターこそ現代人に必要
「頑張り教」から抜け出そう
本書で一番好きなチャプターが最後の「休息」、癒しの章である。老いも若きも、男性も女性も、生きているだけで何かしらのストレスがかかっている昨今だ。「一日中、心穏やか~ふんわり生きてま~す。」みたいな方には、今まで出会ったことがない。こちらから見れば華やかで順風満帆な方であっても、内側に心の闇を抱えていることは往々にしてあるのだと、最近続いている芸能人の辛い訃報からも窺える。
私たち日本人は、小さな頃から「頑張れば褒められる。」「頑張ることは良いことだ。」「頑張れば成果が残せる。」「休むより頑張るほうが偉い。」こんな価値観の中で生きてきたように思う。
頑張りがプラスに働くのは、時と場合によるのだと知ったのは、大人になってメンタルが弱ってからだ。しかも、持っているエネルギーを何事にも常時100%出さなくてもいいんだということも、苦しい思いをしながら学んだ。
学んでも、身に沁みついてしまった「頑張り教」からは簡単には抜け出せず、「頑張らない自分」「頑張れない自分」を責めては落ち込むことがある。頑張り始めると今度は加減がうまくいかない。もはや「休息をとること」は自然にできることではなく、意図的に行い訓練して慣れていくものだと知る。
休息のとり方が上手な人は意識しなくても、疲れる前にブレーキをかけたり、適宜休憩を取りながら日々過ごしているのだろう。それが下手だと、ブレインメンタルが弱っていくのだ。5章では、“現代人ならでは”の休息方法が多彩な切り口から紹介されている。自分に取り入れられそうなメソッドを実践していきたい。
「休むのをがんばる」なんて変な言葉だが、我々は積極的に休みながら、心と身体を整えて、楽しく生きていこう。